パステルカラーで彩られた、絵本のようなどこか温かみのある世界。
可愛いキャラクターたちが、画面の中でわちゃわちゃと戦っている。

そんな癒やし度満点なビジュアルに惹かれて本作『Vivid World(ビビッドワールド)』を手に取ったなら、数時間後、あなたはきっと真顔で電卓を叩いているはずです。
本作の戦闘は「オートチェス」ベース。
素早さ順に行動し、毎ターン変動する「TP」が100を超えればスキルを、超えなければ通常攻撃を撃つ。
基本的には、組んだパーティが戦うのを眺めるだけのシステムです。
しかし、このゲームの本質はそこではありません。
限られたリソースとランダムな引きの中から、いかにして「システムを破壊するシナジー」を組み上げるか。
極めて純度の高いデッキ構築・ロジック構築ゲームが、その可愛いビジュアルの下に隠されています。
『眺めるだけ』と聞いて油断しましたね、管理人。
キャラクターたちが戦っている裏で、あなたの脳内では『次はどのシンボルを重ねるか』『誰のレアリティを上げるか』という膨大なタスク処理がフル稼働していましたよ。
狂気の掛け算:「シンボル」と「合成」のジレンマ
ユニットの強さを決めるのは、単なるレアリティではありません。
全キャラクターが持つ2つの「シンボル」こそが、本作の心臓部です。


同じシンボルを持つキャラを特定数パーティに集めると、強烈なボーナスが発動します。
たとえば、こんな組み合わせに出くわしたとします。
- シンボル【ブシドウ】: 味方に「秘策(スキルが2回発動する)」を付与。
- シンボル【騎士団】: 味方全体に「真価(スキルを使うたびにダメージ倍率が上昇)」を付与。
この2つが組み合わさることで、
「ブシドウでスキルを2連射し、そのたびに騎士団の効果でダメージが雪だるま式に跳ね上がっていく」
というシナジーが完成します。
さらに、同じキャラを3体集めると「銀」、銀3体で「金」へとランクアップする合成システムが、プレイヤーの脳を焼いてきます。
単体ステータスが高いレジェンダリーの銅(初期状態)を入れるべきか。
それとも、ステータスは低くてもシナジーを完成させるためにコモンの金(最大強化)を主軸に据えるべきか。
手持ちの札で最適なラインを組む、このヒリヒリする取捨選択の連続に、気づけば外が明るくなっているわけです。
実践編:とあるダンジョンでの思考プロセス
実際のプレイでプレイヤーの脳内で何が起きるかをお見せします。
たとえば、ダンジョン「メディア樹海」に潜った直後。


画面には最下層までのルートと、各階層で入手しやすい「ピックアップシンボル」が提示されます。
今回の地下4階のピックアップは以下の3つのシンボルでした。
- シンボル【ピラミッド】: 味方に「聖罰(回復時に敵へダメージ)」を付与。
- シンボル【ジン】: 味方に「代償(HP減少時にTP増加)」を付与。
- シンボル【ブラウン】: 味方に「激怒(攻撃力アップ。HP減少時にさらに増加、回復時に半減)」を付与。
「ジン」と「ブラウン」の組み合わせは、『HPが減るたびに、攻撃力とスキル発動に必要なTPが爆増する』という強烈なシナジーを生みそうです。
この時点で、このダンジョンでは「いかに味方を自傷させるか」が火力を出す鍵であると判断できます。
方針が決まれば、道中の行動で優先すべきことは以下の通りとなります。
キャラクターのピック画面で、スキル発動時に自分のHPを削る「スモーキー」や「マンダリン」を見かけたら最優先で確保。




さらに、プレイヤー自身が使う「ジェム(アイテム)」も自傷に寄せます。
味方に魔法攻撃を飛ばす「断罪の斧」や、味方全体のHPを5%削ぎ落とす「ライトニング」。
普通に使えばただのデメリットですが、このパーティに撃ち込めば、味方のTPと火力を急加速させる起爆剤へと変貌します。




加えてさらに、「回復」のロジックにも気を回します。
「ブラウン(激怒)」のバフは、HPを回復すると半減してしまうため、こまめに回復するヒーラーとは相性が最悪。
そこで、「1回の特大回復で一気に持ち直す」という運用を採用します。
ここで白羽の矢が立つのが、味方全体を大きく回復しつつ、自身も「聖罰」を付与できるキャラクター「セラフィナ」です。


ピックアップの「ピラミッド」との相乗効果により、溜め込んだ起死回生の特大ヒールが、そのまま敵を消し炭にする「極大ダメージ」へと変換されます。
提示されたシンボルから、キャラクター、ジェム、回復のタイミングに至るまで、すべてのピースが「たったひとつの美しいコンボ」のために収束していく。
これこそが本作の底知れない恐ろしさであり面白さです。
「ジェム」と「探索」が絡み合うリソースパズル
戦闘がオートで進む中、ダンジョン探索自体も一筋縄ではいきません。
小部屋を移動するごとに「行動ポイント」が消費され、ゼロになると味方全体がダメージを受けます。
マップ上の素材を拾うために「いかに一筆書きで効率よく回るか」を考えるのですが……。
「中ボス戦の直前にショップで枠を拡張したい」
「でも今は手持ちが溢れているから先に合成壺を経由してジェムを上位互換にしたい」
こんな風に、状況ごとのタスクが複雑に絡み合い、単純なルート構築では済まない重厚な「リソース管理パズル」へと変貌していきます。


ラスボス討伐は壮大な「チュートリアル」
緻密なシナジーについての理解が深まってきたところで、ついにラストダンジョンへ。
そこでしみじみとユニット図鑑を開いたとき、ふと手が止まるはずです。
「……あれ? 図鑑、半分しか埋まってなくないか?」
加えて、ここまでの道のりはシステムが「特定のシナジーを組みやすいように手回ししてくれていた」、いわば壮大なチュートリアルに過ぎなかったことに気づきます。
ラスダン以降はピックアップが完全ランダムになり、これまで蓄えた知識を総動員して、アドリブで最適解を組み上げる「本当の戦い」が幕を開けます。
さらに、「ジェムに追加効果を付与するジェム」という、これまでとは全く別のロジックを持ったモードまで解放される始末。
ゲームを完全に理解したと思ったプレイヤーを、根底からひっくり返す別ロジックの提示。
開発陣からの『こういう楽しみかたはいかがしょうか?』という挑戦状ですね。
総評:可愛い顔をした底なしの「思考の沼」へようこそ
『Vivid World(ビビッドワールド)』は、パステルカラーの可愛いキャラクターたちの姿を借りた、ゴリゴリの思考型・最適化ゲームです。
「なぜこの構成で勝てなかったのか?」
「もっと効率よくダメージを跳ね上げるシナジーはないか?」
そんな疑問に取り憑かれ、気づけば次のダンジョンへと潜ってしまう。
自動化ゲームやデッキ構築で「完璧なコンボ」がカチッとハマったときのあの快感が好きな方には、自信を持っておすすめできる一本です。
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