今回は、新作インディーゲーム『Spirit Dungeon』の体験版をプレイしてみた記録を紹介します。
ジャンルとしては「オートバトル × デッキ構築 × ローグライク × ダンジョンクロウル」。
主人公は召喚士の少女、可愛い精霊たちを集めてダンジョンを探索するという、王道ファンタジーな世界観です。
率直な感想からお伝えすると、「挑戦的なシステムの組み合わせで光る部分はあるものの、現状(体験版)では全体的に底が浅く、名作たちと比べると各要素が上手く噛み合っていない」という印象を受けました。
とはいえ、まだインディーゲームの体験版(プロトタイプ)です。
今回は現状の仕様を確認しつつ、今後のアップデートに期待したい改善点について、少しだけ詳細に解剖していきたいと思います。
オートバトル:シナジーとカスタマイズ性の現在地
まずはオートバトルの主役となる「精霊(味方ユニット)」のシステムから。
精霊には「植物」「獣」「虫」といった属性があり、「虫ユニットが多いほど攻撃力アップ」といった非常に分かりやすいシナジーが用意されています。
ただ現状は、分かりやすいがゆえに「虫ならひたすら虫を集める」という単一の編成ロジックになりがちです。

しかも、精霊を集める機会(祠での3択ピック)自体が数フロアに1回と少なく、リロール回数にも制限があります。
そのため、「狙ったシナジーの精霊が出ない」という運要素にかなり振り回されてしまいます。
育成・拡張要素が見当たらない
体験版の範囲内では、ユニットのレベルアップや装備品(である必要はありませんが、代替となる何かしらの要素)、つまり「強化」の仕組みが確認できませんでした。
各ユニットは毎ターン決められた行動(通常攻撃+ちょっとした付随効果など)を繰り返すだけで、独自のスキルツリーなどもありません。
プレイヤーが介入できるのは「誰をどこに配置するか」だけです。
▼ 名作との比較(シナジー構築)
シナジーを組み合わせて盤面を構築するオートバトルといえば、当ブログでも過去に『ビビッドワールド』のシステム解剖・レビューを行いました。あちらの「ジェム」や「シンボル」がもたらす複雑な論理パズル・圧倒的なカスタマイズ性の面白さと比較してしまうと、どうしても本作の編成はシンプルすぎる印象を受けてしまいます。
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デッキ構築:「ダメージ計算式」への疑念
戦闘は「主人公のカード使用フェーズ」→「精霊たちのオートバトルフェーズ」を交互に繰り返すシステムです。
カードの設計自体も非常にシンプルで、「虫ユニットの数 × 虫ユニットの平均ATKの200%ダメージを与える」といった明確なフィニッシャーが存在します。
ただ、これも結局は「じゃあ虫を集めよう」で思考が完結してしまい、デッキを複雑に回す楽しさにはまだ直結していません。
つまりデッキ構築要素についても、偉大なる先人たち(スレスパ、クロノアーク)や、新進気鋭のローグライクデッキ構築ゲームたちと比較すると、底が浅いという印象を受けざるを得ません。

また、当ブログとして検証せざるを得ない「ダメージ計算式の謎」にも直面しました。

テキストには「味方の平均攻撃力の30%のダメージ」とあります。
しかし実機で検証した結果、味方が1体(ATK 5)の初期状態でも「3ダメージ(本来は1か2のはず)」が出力され、その後パーティーが強化されて平均ATKが15になっても「3ダメージ(本来は4か5のはず)」のままでした。
「最低保証値」の記述漏れなのか、変数の参照先がズレているのか。
このあたりは、今後のアップデートでの計算式の見直しに期待したい部分です。
ダンジョンクロウル: 探索とエンカウント設計における課題
本作は、キャラクターを操作してダンジョンのマップを歩き回るという、このジャンルにおいては独特なシステムを採用しています。
しかし個人的には、この「探索」の部分に最も大きな設計上の課題を感じました。
機能していないシンボルエンカウント
本作の敵シンボルはプレイヤーより足が速く、執拗に追いかけてきます。
また、倒しても即座に、かつ無限にリポップします。

これは完全に持論になってしまいますが、「プレイヤーが走っても逃げ切れないシンボルエンカウント」は、実質的にランダムエンカウントと全く同じであり、ゲームデザインとしてあまり意味がないと思っています。
本来、シンボルエンカウントを採用する最大の理由は「戦いたい時は当たりにいき、戦いたくない時は避けて進める」という選択の自由をプレイヤーに与えるためのはずです。
本作ではそれが機能しておらず、無限に再出現する敵に強制的に捕まり続けます。
戦闘を重ねても使い道の少ないエネルギーが溢れるだけで旨味がないため、結局ひたすら「逃げる」ボタンを連打する羽目になりました。
ファストトラベル(ワープ)がない
発見済みの祠や階段に飛ぶ機能がないため、移動が非常に手間で、その道中で前述の「逃げ切れない敵」に何度も捕まってしまいます。
マップの視認性
ミニマップに色付きの点が表示されますが、凡例(説明)がないため、それが敵なのか祠なのか階段なのか、直感的に判別できません。

▼ 名作との比較(探索とリソース管理)
ローグライクデッキ構築で「ダンジョン内をキャラが歩く」といえば、当ブログでも激賞した『クロノアーク』という偉大な先駆者がいます。あちらはワープ機能が完備されているだけでなく、「そのフロアにおける戦闘回数が決まっている(有限である)」からこそ、得られる経験値やお金のやりくり(リソース管理)に極限のロジックが求められました。
また、ランダムなイベントマスや宝箱、特定条件で通行可能になる隠された道、など、探索のワクワク感もありました。
本作の「無限に敵が湧き、ただ毎回形が異なるだけのダンジョンをランダム生成と言い張る実質一本道」は、まだダンジョンクロウルの面白さを引き出せていないと感じます。
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総評:素材は良く、各要素が生みだすシナジーに期待
可愛らしいグラフィックや、「召喚士として精霊を支援する」というコンセプト自体は間違いなく魅力的です。
開発陣が新しいジャンルの融合に挑戦している姿勢は、インディーゲームとして大いに評価できるポイントです。
現状では、プレイヤーが「考えて最適化する」余地が少なく、探索のストレスがやや上回ってしまっています。
しかし、製品版に向けてシナジーの複雑化、カード計算式の整理、探索の利便性向上などが行われれば、大化けするポテンシャルは十分に秘めています。
(※今回は体験版の現状仕様のレポートであるため、Steamリンクの設置は控えさせていただきます。今後のアップデートに期待して待ちましょう。)
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